累計3億円を得ている栗原久美子です。

第1章:「これ以上は下げられない」と、電卓を置いた夜
出品画面を開いて、値段の欄でカーソルが止まる。同じような商品を売っている人の値段が頭をよぎって、少しだけ低い数字を入れる。売れてほしいから、そうしてしまう。
関税の話がニュースに出るようになってから、この一手間で悩む方がぐっと増えました。仕入れの値段は変わっていないのに、海外に届くまでに乗ってくるものが増えた。その分をどこかで飲まないと売れない気がして、自分の取り分から削っていく。気づくと、売れているのに手元に何も残っていない月ができあがります。
がんばりが足りないわけではありません。値段の決め方を、下から決めているだけです。
第2章:安くすれば選ばれると思っていた頃
海外向けの販売を始めた頃、私が真っ先にやったのは、同じ商品を出している人の値段を見て、その少し下に自分の値段を置くことでした。それがいちばん確実だと思っていました。
けれど、下に置いた瞬間から、相手も下げてきます。こちらがまた下げる。売れたときの喜びは同じなのに、届いたあとに残る金額だけが毎回小さくなっていく。送料が上がった、手数料が引かれた、そこに関税の話まで加わって、ついに一件あたりの残りがコーヒー一杯分になった日がありました。
数をこなせば追いつくと思って、出品の数を増やしました。作業だけが増えて、通帳の数字は動かない。あのときの疲れ方は、忙しさではなく、報われなさから来ていたのだと思います。
第3章:値段は、最後に決めるものではなかった
考え方を変えたきっかけは、とても地味な気づきでした。
私はずっと、値段を最後に決めていました。仕入れて、写真を撮って、説明文を書いて、最後に「いくらにしようかな」と迷う。その順番だと、目の前にあるのは他人の値段だけです。基準が外にあるので、下げる以外の答えが出てきません。
順番を逆にしてみました。この一件で自分はいくら残したいのか。それを先に決めてしまう。そのうえで、届くまでに出ていくお金を全部書き出して、足していく。すると値段は、迷って決めるものではなく、計算した結果として出てくるものに変わりました。
関税の割合が上がったとしても、この順番で決めていれば、上がった分は値段に乗るだけです。自分の取り分を削る場所が、そもそも計算の中にありません。恐ろしいのは関税そのものではなく、値段を最後に決める癖のほうでした。
第4章:残したい金額から、逆に値段をつけていく
やり方はとても単純です。
紙でも表計算でも構いません。まず、一件でいくら残したいかを一番上に書きます。次に、その商品が相手の手元に届くまでに出ていくお金を、思いつく限り並べます。仕入れ、国内での送り賃、梱包に使うもの、海外までの送料、販売にかかる手数料、そして関税として乗ってくる分。この全部を足したものに、残したい金額を足す。そこで出てきた数字が、自分の値段です。
大事なのは、途中で出てくる「これくらいで大丈夫だろう」を挟まないことです。送料は季節や重さで変わりますし、関税の扱いも荷物の送り方で変わります。分からない部分は、少し多めに見ておくほうが安全です。
そうやって出した値段が、周りより高くなることは普通にあります。そこで下げないでください。下げると、また元の場所に戻ってしまいます。やることは二つです。
一つは、その値段の理由を相手に見せること。写真をもう一枚足す、状態を正直に書く、届くまでの日数と送り方をはっきり書く、関税の扱いを先に明記しておく。海外の買い手が不安に思うのは値段そのものより、届くまでに何が起きるか分からないことです。そこが埋まっていれば、少し高くても選ばれます。
もう一つは、扱う商品のほうを見直すこと。安いものを数多く売る形は、出ていくお金が増えた時期にいちばん苦しくなります。一件の金額が大きいものに移すと、同じ関税の割合でも、残る金額の絶対量が変わってきます。日本にしかないもの、探している人がはっきりいるもの。そういう商品は、値段だけで比べられにくくなります。
第5章:一件の重さが変わると、追われ方が変わる
この順番で値段を決めるようになってから、いちばん変わったのは気持ちの部分でした。
売れた時点で、いくら残るかがもう分かっている。だから、値引きを頼まれても落ち着いて返事ができます。ここまでなら下げられる、ここから先は下げない。その線が自分の中にあるだけで、やり取りがずいぶん楽になります。
そして、一件で残る金額が増えると、月に必要な件数が減ります。件数が減れば、写真を撮る時間も、梱包する時間も、返事を書く時間も減る。空いた時間を、次に売るものを探すことに使えます。安く売って数で埋めていた頃とは、同じ売上でも一日の中身がまるで違います。
第6章:値段以外で選ばれる売り方は、海外でこそ効く
こういう値段の決め方は、国内で売っているとなかなか身につきません。近くに似た商品がたくさんあって、比べられるのがどうしても値段になるからです。
売り先を海外に広げると、その前提が変わります。日本では当たり前に買えるものが、向こうでは探しても見つからない。見つけた人にとっては、多少高くても手に入るほうが価値があります。買う側の困りごとが値段ではなく、そもそも出会えないことに移るので、こちらは値下げ以外の場所で選ばれるようになります。
必要な英語も、思っているほど多くありません。商品の状態を伝える文、送り方を説明する文、値引きを丁寧に断る一言。この程度なら、今は翻訳も文章の下書きもGeminiのような無料の道具で足ります。ただ、道具があるだけでは値段は決まりません。何をいくらで売るかを決めるのは、最後まで自分の判断です。だからこそ、実際に売って残してきた人のやり方を先に知っておくと、遠回りが減ります。
第7章:今日、一つだけ値札を見直してみる
大きな見直しは要りません。今出しているもののうち、一つだけ選んでください。
その商品が相手に届くまでに出ていくお金を、思いつく限り書き出します。そして、自分がその一件でいくら残したいのかを書き足します。足してみて、今つけている値段より高くなったなら、そこが本来の値段です。あなたはこれまで、その差額を自分で負担していたことになります。
関税の割合は、自分では動かせません。動かせるのは値段の決め方と、扱う商品と、届くまでの説明の丁寧さです。動かせるところだけ動かせば、条件が変わっても利益はちゃんと残ります。
海外向けの販売で値段をどう決めていくか、扱う商品をどう選ぶかについては、メルマガでもう少し具体的にお話ししています。値下げでしのぐやり方から抜け出したい方は、よかったら覗いてみてください。
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<<<今日の一言英語>>>
I’d rather offer better service than a lower price.
(アイド ラザー オファー ベター サービス ザン ア ロウアー プライス)
意味:値段を下げるより、より良いサービスをお届けしたいと思っています。
使用例:値引きを頼まれて断りたい場面で、
「I’d rather offer better service than a lower price.
(値段を下げるより、より良いサービスをお届けしたいと思っています)」
と伝えると、断りながらも前向きな姿勢が伝わります。
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