累計3億円を得ている栗原久美子です。

第1章:発送も済んだのに、届いた一通で手が止まる
商品は送り出した。追跡番号も知らせた。あとは届くのを待つだけ、と思っていた夜に通知が光る。開くと数行の英語。単語はどれも見たことのあるものばかりなのに、返信欄に指を置いたまま動かなくなります。
何を聞かれているのかは、だいたい分かる。分からないのは、どう返せば角が立たないのかというほうです。海外向けの販売で最後まで残る不安は、商品でも発送でもなく、たいていこの一通だと思います。
売り買いの英語には、出品のときの言葉、荷物を送るときの言葉、やり取りのときの言葉があります。前の二つは入力欄の名前なので調べれば済みますが、やり取りの言葉だけは自分で選ばなければなりません。
第2章:翻訳したまま返すと、なぜか話が長くなる
日本語で書いた文をそのまま訳して送ると、丁寧なつもりの一通が、思ったより重く届きます。
たとえば冒頭に置きたくなる「問題が起きまして」。訳すとProblemが出てきます。間違いではないのですが、この一語には大ごとの響きがあって、受け取った側は身構えます。ちょっとした困りごとなら、Issueのほうが軽く伝わり、話も短く済みます。
お詫びも同じです。日本語の感覚のまま謝罪を重ねると、Sorryが三度も四度も並びます。読む側にはよほどの落ち度があったのだと伝わり、望んでいない返金や返品の話が先に出てきます。
長さも効いてきます。事情を最初から順に説明した長い文は、読む前に身構えられます。返事のないまま数日が過ぎ、気づけばCaseという言葉の入った通知が届いている。英語が下手だからではなく、言葉の重さを知らないまま選んでいたためです。
第3章:やり取りの英語は、気持ちより順番を伝えている
海外のお客さまとのやり取りを重ねていくと見えてくるのは、相手が知りたいのは謝罪の深さではない、ということです。
今どうなっているのか。次に誰が何をするのか。いつまでに終わるのか。この三つが書いてあれば、たいていの人は静かに待ってくれます。逆に、どれだけ詫びても、次の一手のない返信は不安だけを残します。
やり取りの英語は、気持ちを伝える言葉というより、今どの段階にいるかを知らせる札のようなものです。受け取りました、調べています、こうします、片づきました。その札の名前をいくつか持っておくだけで、返信を書く時間が半分以下になります。
覚える数も多くありません。やり取りで実際に使う言葉は、驚くほど限られています。
第4章:受け取る、調べる、決める。その順に言葉がある
まずは、届く連絡の呼び名から。買う前の質問はInquiryやQuestionという形で来て、画面ではAsk a questionという入り口から送られてきます。件名によく付くRegardingは「〜の件で」を表し、そのあとに商品名や注文番号が続きます。
返信の一行目に置きたいのがThank you for reaching out、ご連絡ありがとうございますという受け取りの合図です。日本語ならお詫びから始めたくなるところですが、まず届いたことを知らせるほうが、相手の不安は早く下がります。
困りごとに触れるときはIssue。先に書いたとおり、Problemより角が立ちません。詫びる場面では動詞のApologizeを使い、I apologize for the delayのように、何について詫びるのかを一緒に置きます。Sorryは短い会話向きで、取引の文面ではApologizeのほうが落ち着いて見えます。手間をかけた事実そのものを指す言葉がInconvenienceです。
そのあとが本題です。調べますと伝えたいときはLook into、こちらで片づけますという意味がResolve。返品の申し出はReturn Request、注文の取り消しはCancellation Requestという名前で届きます。返金はRefundで、全額ならFull Refund、一部だけならPartial Refundと呼び分けます。
話がまとまらないときに買い手が開くのがCaseで、その窓口の名前がResolution Centerです。
最後に残るのがFeedback、取引の評価です。良い評価がPositive、どちらでもないものがNeutral、良くない評価がNegative。評価を書く行為をLeave feedbackと言います。書いてもらいたいときは、ありがたく思うという意味のAppreciateを添える。催促ではなく礼として届きます。
第5章:三行で返せるようになると、夜が静かになる
言葉の重さが分かってくると、返信は驚くほど短くなります。受け取りの一行、今の状況の一行、次にすることの一行。それで足ります。
長い文を書かなくなると、送るまでの時間が縮みます。届いたその日のうちに返せるようになると、相手が黙って待つ時間が減り、Caseまで進む件がほとんど出てこなくなります。
評価も変わってきます。遅れやすれ違いのあった取引でも、途中の連絡がこまめに届いていた相手は、良くない評価を残しません。何が起きたかより、放っておかれなかったかどうかを見ているからです。
第6章:訳す手間は消えても、選ぶ仕事は残る
英語そのものは、もう大きな壁ではありません。届いた長い文もGeminiのような無料の道具に貼りつければ意味が取れますし、返信の下書きまで作ってもらえます。
それでも、道具が出してくれるのは、無難で長めの文章までです。ここでIssueと書くかProblemと書くか、詫びを一行で止めるか、返金をどこまで申し出るか。この判断は翻訳の外側にあって、実際にお客さまとやり取りしてきた数がそのまま差になります。覚える手間が減った今だからこそ、経験のある人の返し方を見せてもらう値打ちが上がります。
日本の品物を欲しいと言ってくれる人は、世界中にいます。英語は、その人たちと言葉を交わすための道具にすぎません。
第7章:今日は全部答えなくていい、受け取りの一行だけ
もし返事を書けないまま置いてある連絡があるなら、今日は全部に答えなくて構いません。Thank you for reaching out.の一行と、いつまでに詳しくお返事しますという一行。この二行だけ送ってみてください。
それだけで相手の待ち方が変わりますし、こちらも落ち着いて調べる時間が取れます。やり取りが怖いのは英語のせいではなく、何をどの順で伝えればいいのかを決めていないからです。
英語を使った海外向けの販売の始め方や、お客さまとのやり取りの進め方については、メルマガでもう少し具体的にお話ししています。よかったら覗いてみてください。
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<<<今日の一言英語>>>
Let me know how you’d like to proceed.
(レット ミー ノウ ハウ ユード ライク トゥ プロシード)
意味:どのように進めたいか、お知らせください。
使用例:返品か返金かを相手に選んでもらう場面で、
「Let me know how you’d like to proceed.
(どのように進めたいか、お知らせください)」
と伝えると、押しつけずに次の一手を相手に預けられます。
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