累計3億円を得ている栗原久美子です。

第1章:大きな数字を見た瞬間に、自分とは関係ない話になる
ニュースで「一兆円」という数字を見かけると、へえ、と思ったきり、そのまま画面を閉じてしまう。そういう読み方を、私も長いことしていました。
経済産業省の統計に、アメリカの方が日本のお店からインターネットで買い物をした金額として、一年で1兆4,798億円という数字が出ています。桁が多すぎて、正直、実感がわきません。自分の財布の中身とはあまりに離れているので、どこか遠い国の話のように聞こえます。
でも、この数字を眺めていて、あるとき順番が逆だったと気づきました。大きい数字だから自分に関係ないのではなくて、自分に関係ある小さな買い物が、集まってこの大きさになっている。順番を戻すだけで、見え方がずいぶん変わります。
第2章:私も「これは会社がやることだ」と思っていました
海外に何かを売る、と聞いたとき、最初に頭に浮かぶのは大きな会社の名前だと思います。倉庫があって、社員がいて、船で運んで、という絵です。個人が入り込む隙間なんてどこにあるのだろう、と。
私も同じように考えていた時期がありました。英語も専門の勉強をしたわけではありませんでしたし、貿易の知識もありません。数字を見れば見るほど、自分がいる場所からその世界までの距離が遠く感じられて、調べるほど動けなくなる。よくある足踏みです。
そのあいだにも、誰かが日本のどこかから小さな箱をひとつ送って、アメリカの誰かがそれを受け取っていました。私がためらっていた時間にも、その一件一件は積み上がり続けていたわけです。
第3章:一兆円を誰か一人が買ったわけではない
当たり前のことなのに、しばらく気づけませんでした。
その金額は、誰か一人が一度に払ったものではありません。アメリカのどこかに住む方が、日本のお店を見つけて、これが欲しいと思って、五千円や一万円の買い物をした。その一回が数えきれないほど重なった合計が、あの桁になっています。
つまり、この中に入るということは、一兆円分の何かを用意することではなくて、その一回を自分が担うということです。一粒でいい。一粒が二粒になり、月に十粒、二十粒と増えていく。私がやってきたことも、突き詰めればそれだけでした。
大きな数字は、遠くから見ると壁に見えます。近づいてよく見ると、細かい粒の集まりです。自分が触れるのはそのうちの一粒だけで、それで十分に成り立ちます。
第4章:一粒を担うために、実際にやることは小さい
では一粒を担うために何をするのか。作業自体は、想像よりずっと地味です。
まず、自分が説明できるものを一つ選びます。詳しくないものを扱うと、質問が来たときに答えられません。趣味で集めてきたもの、仕事で毎日触っていたもの、家族が好きだったもの。何でもいいのですが、自分の言葉で良さを言えるかどうかが分かれ目になります。
次に、写真を撮ります。明るい場所で、傷や汚れも隠さずに。海外の方は現物を見られないので、写真が店員さんの代わりです。ここを丁寧にやるかどうかで、同じ品でも売れ方が変わります。
そして説明文を英語で書きます。ここで身構える方が多いのですが、今はGeminiのような無料の道具で下書きが作れます。日本語で書いた説明を渡して英語にしてもらい、自分で読んで、言い過ぎているところを直す。この最後の直しだけは自分でやってください。商品の状態を大げさに書くと、後で困るのは自分です。
最後に、値段を決めて送る。送料と関税の扱いを先に確かめて、それを含めた値段にしておくと、相手も安心して買えます。
ここまでで、特別な資格も、大きな元手も出てきません。出てきたのは、選ぶ、撮る、書く、送る、それだけです。
第5章:一件目が売れると、数字が自分の話になる
初めて海外の方から注文が入った日のことは、たぶん誰でも覚えていると思います。画面に見慣れない住所が並んでいて、本当にこの人に届くのだろうかと不安になりながら箱に詰める。
その一件が完了したあと、同じニュースを見ると、まったく違って見えます。あの中に自分の一粒が入っている、と分かるからです。統計の話が、急に自分の生活の話になる。この切り替わりが、続けていくうえでいちばん大きかった気がします。
金額の大きさより、自分が中に入ったという感覚のほうが、次の一件を運んできてくれます。
第6章:日本にいることが、そのまま強みになる場所がある
日本にいると気づきにくいのですが、日本のものを探している方は世界中にいます。日本語で書かれた情報を読めて、日本のお店で普通に買い物ができる。それだけで、海外から見れば十分に希少な立場です。
英語は、その立場を届けるための道具でした。完璧に話せる必要はありません。商品の説明と、簡単なやり取りができれば足ります。翻訳も画像作りも無料の道具でまかなえる今、語学のハードルは以前よりずっと低くなっています。
ただ、道具が便利になったからといって、それだけで売れるわけではありません。何を選ぶか、いくらで出すか、どう伝えるか。この部分は最後まで人の判断が要ります。だからこそ、先に通ってきた人のやり方を見せてもらうのがいちばん早いと、私は思っています。
第7章:今日は、一つ選ぶところまでで十分です
大きな数字の話から始めましたが、今日やることは小さくて構いません。
家の中を見回して、これなら海外の人に説明できる、と思えるものを一つ選んでみてください。売らなくていいです。選ぶだけで、あの数字との距離が少し縮まります。次の休みに写真を撮って、その次に英語の説明を書けば、それでもう一粒に手が届きます。
一兆円を相手にする必要はありません。その中の一粒を、自分が担うだけです。
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